日本経済新聞社と読売新聞東京本社が9月1日、相次いでAIを活用した情報サービスの新機能を開始した。
日経は法人向け生成AIサービス「NIKKEI KAI」で、外部の生成AIと日経のコンテンツをつなぐ「NIKKEI KAI MCP」の提供を開始。一方、読売は記事データベース「ヨミダス」にAI検索機能を導入した。
いずれも新聞社が長年蓄積してきた記事やデータをAI時代にどう生かすかという取り組みだが、そのアプローチは異なる。
日経は「外部のAI」とつなぐ
「NIKKEI KAI MCP」は、生成AIと外部の情報源を接続する規格「Model Context Protocol(MCP)」に対応した機能だ。
企業の利用者はMicrosoft Copilot、ChatGPT、Claudeなどの生成AIやAIエージェント上から、日経が提供するビジネス情報を自然言語で呼び出し、調査や事業企画などに活用できる。
特徴は、利用者が必ずしも日経のサービス画面を起点にしなくてもいいことだ。
企業が日常的に利用する生成AIの側から、必要に応じて日経の情報にアクセスする。日経は自社のコンテンツを「AIから利用できる情報源」として提供し始めた。
読売は1900万本超の記事をAIで探す
読売がAIを導入したのは、記事データベース「ヨミダス」だ。
ヨミダスには1874年の読売新聞創刊号以降、1900万本を超える記事が収録されている。
従来の検索では、入力した単語と一致する記事を探す方式が中心だった。新たなAI検索では文章やあいまいな言葉でも検索でき、検索内容に応じて関連記事を探しやすくした。
読売は導入の背景として、学校や公共図書館などから、学生や一般利用者でも気軽に記事を検索できるようにしてほしいという要望があったとしている。
読売の場合は、AIによって巨大な自社アーカイブへの「入口」を変える取り組みといえる。
「AIへ出す」日経、「AIを入れる」読売
同じ9月1日に始まった両社のサービスだが、方向性を比べると違いが見える。
日経は、自社の情報を外部の生成AIやAIエージェントから利用できるようにした。
読売は、自社の記事データベースにAI検索を導入し、蓄積した過去記事を探しやすくした。
いわば日経は「コンテンツをAIの側へつなぐ」。読売は「AIを自社コンテンツの側へ入れる」。
対象ユーザーや用途が異なるため、両サービスを単純な競合として比べることはできない。
ただ、国内を代表する新聞社2社が同じ日に、それぞれ異なる方法で「AI×自社情報」に踏み出したことは興味深い。
新聞社が持つ「過去」が再び資産になる
新聞社は毎日、大量の記事を生み出す。
ニュース記事の多くは公開直後に最も読まれ、その後は時間とともにアクセスされにくくなる。
その一方で、大手新聞社には数十年、場合によっては100年以上にわたって蓄積された記事がある。
生成AIや自然言語検索によって、この巨大なアーカイブの使われ方が変わろうとしている。
利用者が正確なキーワードを知らなくても過去の記事を探せる。普段使っている生成AIから、新聞社が提供する情報を直接呼び出すこともできる。
記事への入口が「読む」だけではなく、「質問する」「探してもらう」「AIから呼び出す」へと広がり始めている。
読売は「333」でも情報領域を広げる
読売は近年、記事以外のデータ領域にも取り組みを広げている。
2025年3月24日には「読売株価指数(読売333)」の算出・公表を開始した。国内上場企業から333銘柄を選び、各銘柄を同じ比率で組み入れる「等ウェート型」の株価指数だ。
日本を代表する株価指数として長い歴史を持つ日経平均株価(日経225)とは算出方法も設計思想も異なる。
ここで重要なのは「225対333」という対立そのものではない。
新聞社が報道記事を制作・配信するだけでなく、経済活動で利用される指数やデータ、そしてAIから利用できる情報基盤へと事業領域を広げていることだ。
AI時代、新聞社は「記事を作る会社」だけではなくなる
生成AIを巡っては、報道機関の記事がAIの学習に利用されることや、AI検索の普及によってニュースサイトへの流入が変化することなど、メディア側が受ける影響に注目が集まりやすい。
しかし同時に、新聞社自身がAIを使い、自分たちが持つ情報資産の価値を引き出す動きも始まっている。
日経と読売が9月1日に始めた二つのサービスは、その方法が一つではないことを示している。
AIに自社コンテンツを「どう使われるか」だけでなく、AIを使って自社コンテンツを「どう使わせるか」。
新聞社が長年蓄積してきた過去の記事やデータは、生成AI時代に改めて重要な資産になりそうだ。
参照情報
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読売新聞東京本社「読売新聞データベース『ヨミダス』にAI検索機能を搭載」
2026年8月28日発表。9月1日からヨミダスにAI検索機能を導入。1874年の創刊号以降1900万本を超える記事を収録するヨミダスの概要や、AI検索導入の背景などを確認。
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2026年9月1日発表。Model Context Protocol(MCP)を利用し、ChatGPT、Claude、Microsoft Copilotなどの生成AI・AIエージェントから日経のビジネス情報を利用できる仕組みについて確認。
生成AI連携機能「NIKKEI KAI MCP」提供開始、企業の調査業務や事業企画を支援株式会社 日本経済新聞社のプレスリリース(2026年9月1日 15時10分)生成AI連携機能「NIKKEI KAI MCP」提供開始、企業の調査業務や事業企画を支援 -
野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング「読売株価指数(読売333)」関連情報
2025年3月24日に「読売株価指数(読売333)」の算出を開始したこと、および333銘柄を対象とする等ウェート型指数であることの確認に使用。
[お知らせ]2025年3月24日より読売株価指数(読売333)算出開始
